事件No.6
意匠番号:ZL201730667916.7
意匠に係る物品:移動通信機器に用いられるグラフィカルユーザインタフェース
意匠権者:北京微播視界科技有限公司
無効審判請求人:喬金
審判結果:意匠権を全部無効とする。
判決日:2019年9月20日
【要点】
グラフィカルユーザインタフェースに表示される共有コンテンツはGUI意匠の保護範囲に属しない。
【関連背景】
北京微播視界科技有限公司 (TikTokの関連会社)
【本件登録意匠の概要】
製品名称:「移動通信機器に用いられるグラフィカルユーザインタフェース」
【対比意匠1】
製品名称:「携帯電話に用いられるグラフィカルユーザインタフェース」
【対比意匠2】
製品名称:「携帯電話に用いられるグラフィカルユーザインタフェース(開始インタフェース)」
【意匠の用途】
対比意匠1、2の用途と、本件登録意匠の用途とは完全又は部分的に同じであるので、同一又は類似の種類の製品に属する。
【意匠の審査基準】
特許法第23条第2項の規定:
専利権を付与する意匠は、先行意匠或いは先行意匠の特徴の組み合わせと比べて、明確な相違点を具備しなければならない。
「進歩性」の基準とは異なる重要なのは、視覚効果の変化の程度の判定であり、容易に創作できるか否かや、自明性の判定ではない。
【本件登録意匠の特徴】
登録意匠は、その正面図及び使用状態参考図で示されている。
その特徴は:
①携帯電話の形状は、よく見られる角の丸い扁平直方体であり、
②上縁近くの中央に細い長尺状のスピーカーと隣に円形があり、
③左右側面の上方にボタンがあり、
④下縁近くの中央に小判型のボタンがあり、
⑤グラフィカルユーザインタフェースは、上下2つの部分に分けられており、上、下の比率は約3:2であり、
⑥上部の、上端近くの中央には「Follow · Hot」という文字ラベルがあり、
⑦右下角に「+」記号の付いた円形アイコンと、
⑧下に「41」という数字の付いたハート型アイコンがあり、残りの部分は異なるコンテンツを表示できる空白のインタフェースであり、
⑨下部は三つの欄に分けられており、第1欄は5つの完全なアプリケーションアイコンと1つの一部のみ露出しているアプリケーションアイコンであり、5つの完全なアプリケーションアイコンの下には何れも相応のアルファベット文字があり、
⑩第2欄は4つの機能アイコンであり、その下には何れも相応のアルファベット文字があり、
⑪第3欄は、「cancel」というラベルである。
【登録意匠と対比意匠1との比較】
同一の箇所:
⑤グラフィカルユーザインタフェースが上下2つの部分に分けられており、上、下の比率が約3:2であり、
⑥上部の上端近くの中央に文字ラベルがあり、
⑦右下角に「+」記号の付いた円形アイコンと、
⑧下に数字の付いたハート型アイコンがあり、残りの部分はコンテンツのインタフェースであり、
⑨下部は三つの欄に分けられ、第1欄は5つの完全なアプリケーションアイコンと1つの一部のみ露出しているアプリケーションアイコンであり、5つの完全なアプリケーションアイコンの下には何れも相応の文字があり、
⑩ 第2欄は4つの機能アイコンであり、その下には何れも相応の文字があり、
⑪第3欄はラベルである。
相違点:
(1)対比意匠1には携帯電話の形状が開示されておらず、
(2)両者のコンテンツインタフェースの具体的な内容が異なり、
(3)登録意匠の文字が英語であるのに対し、対比意匠1の文字は中国語であり、登録意匠のハート型アイコンの下の数字が「41」であるのに対し、対比意匠1の数字は不明瞭である。
【対比意匠2の特徴】
対比意匠2は、正面図、変化状態図、変化状態参考図1及び変化状態参考図2で示されており、
①その携帯電話の形状は、よく見られる角の丸い扁平直方体であり、
②上縁近くの中央に細い長尺状のスピーカーと隣に円形があり、
③左右側面の上方にボタンがあり、
④下縁近くの中央に小判型のボタンがある。
【登録意匠と対比意匠1、2との比較】
登録意匠と対比意匠1の相違点(1)について:
登録意匠の携帯電話と対比意匠2の携帯電話とを比べると、両者は携帯電話の形状がほぼ同じであるため、相違点(1)は対比意匠2に開示されている。
相違点(2)について:
登録意匠の正面図は該部分が空白であることを表し、使用状態参考図のみでコンテンツ共有後のページ表示状況を表しているので、この相違点は共有コンテンツの違いによるものであって、共有コンテンツの変化によって変わる。
両者の共有コンテンツが同じである場合、このページの内容は同じになるため、共有する具体的なコンテンツは登録意匠のグラフィカルユーザインタフェースの保護範囲ではなく、考慮すべきではない。
相違点(3)について:
意匠は文字の字音や字義を保護せず、文字をパターンとして見るだけであり、これらの文字の位置、寸法比率はほぼ一致している。
次に、これらの文字は異なる言語のユーザに対して行う適応的な調整であり、主な作用は機能ラベルであり、あるいはその上のアイコンを標識して機能する。
最後に、これらの文字は、グラフィカルユーザインタフェースの全体から見れば、やはり局所的な僅かな差異に属する。
従って、上記の相違点(3)は製品の視覚効果全体に顕著な影響を与えない。
【合議体の認定】
「全体観察、総合判断の原則」により、登録意匠と対比意匠1及び対比意匠2の組み合わせとを比べると、両者の相違はレイアウトの僅かな差異に属し、視覚効果全体に顕著な影響を与えない。
登録意匠と従来設計の特徴の組み合わせとを比べると、明らかな区別がなく、専利法第23条第2項の規定に適合しない。
よって、意匠権を全部無効とする。
【本件からの教示及び典型的意味】
1、使用状態参照図における共有内容は、GUIの保護範囲に対し限定作用がない。
2、秘密保持が十分でないためにGUI意匠が出願前に公開されてしまうということがないように、出願前の秘密保持には十分注意する。本意匠は、意匠権者の一人が、出願日前に係争GUI意匠を「抖音(中国版TikTok)」上で公表してしまっていた。