2020年10月17日、第13期全国人民代表大会常務委員会第22回会議において、第四次改正専利法が採択された。改正法は2021年6月1日から施行される。今回の改正のポイントは以下の通り。
1、意匠の保護強化
l保護期間の延長:意匠の存続期間が10年から15年に延長された。
l部分意匠:現行法では、製品の「全体」に対してなされた意匠しか意匠登録できなかったが、改正法では、製品の「一部」も保護客体に追加された。
l国内優先権:意匠出願について国内優先権主張(6ヵ月以内)が認められるようになった。
2、特許審査に不合理な遅延があった場合、特許権の存続期間の補填を請求することができる
l特許の出願日から満4年が経過し、かつ実体審査請求日から満3年が経過した後に特許権が付与された場合、国務院専利行政部門は、特許権者の請求に応じて、権利化の過程での不合理な遅延について特許権の存続期間の補填を請求することができる。ただし、出願人に起因する不合理な遅延はこの限りでない。具体的な補填方式及び審査基準については、今後、専利法実施細則において明確化される。
3、医薬品特許の保護
l新薬の販売審査・評価承認にかかる時間を補填するために、中国で販売許可を得た新薬の特許に対して、国務院行政管理部門は、特許権者の請求に応じて、存続期間の補填を行うことができる。補填期間は、5年を超えないものとし、新薬販売許可後の特許権の合計有効期間は14年を超えないものとする。
l医薬品の販売審査・評価承認の過程において、医薬品の販売許可申請人と関連特許権者又は利害関係人とに、登録申請中の医薬品に関連する特許権について紛争が生じた場合、関連当事者は裁判所に提訴し、登録申請中の医薬品の関連技術案が、他人の医薬品特許権の保護範囲に含まれているか否かの判決を求めることができる。
国務院医薬品監督管理部門は所定の期限内に、裁判所の効力が生じた判決に基づき、医薬品販売許可の批准を一時停止するか否かの決定をすることができる。
医薬品の販売許可申請人と関連特許権者又は利害関係人は、登録申請中の医薬品に関連する特許権の紛争について、国務院専利行政部門に行政裁決を求めることもできる。
国務院医薬品監督管理部門は国務院専利行政部門と共同して、医薬品販売許可審査と医薬品販売許可申請段階の特許権紛争解決の具体的な協働方法を制定し、国務院の同意を得てから施行する。
4、専利権侵害の賠償
l故意に専利権を侵害し、情状が重い場合、賠償額を1倍~5倍に引き上げることができるようになった。
l法定賠償金額の引き上げ:法定賠償金額の範囲が、従来の1万元~100万元から3万元~500万元に引き上げられた。
l裁判所は賠償金額を判定するために、権利者が全力を尽くして証拠を提示したにもかかわらず、侵害行為に関わる帳簿、資料が主に権利侵害者に掌握されている場合、権利侵害者に侵害行為に関わる帳簿、資料を提供するよう命じることができる。権利侵害者が提供しないか、又は虚偽の帳簿、資料を提供した場合、裁判所は、権利者の主張及び提出した証拠を参考して賠償金額を判定することができる。
5、行政保護メカニズムの整備
l国務院専利行政部門(即ち、国家知識産権局)は専利権者又は利害関係人の請求に応じて、全国において重大な影響がある専利権侵害紛争を処理することができる。
l地方人民政府の専利管理部門は、専利権者又は利害関係人の請求に応じて専利権侵害紛争を処理するにあたり、本行政区域内において同一の専利権を侵害した事件を合併して処理することができる。区域を跨って同一の専利権を侵害した事件について、上級人民政府の専利管理部門に処理を請求することができる。
l専利法執行担当部門は、関係当事者に尋問し被疑違法行為に関わる状況を調査することができる。当事者が被疑違法行為を行った場所に対し、現場調査を行うことができる。被疑違法行為に関わる製品を検査することができる。
6、開放許諾制度を導入
l専利権者が書面にて国務院専利行政部門に如何なる機関又は組織又は個人にもその専利の実施を許諾する意思があると声明し、許諾使用料の支払方式、基準を明確にした場合、国務院専利行政部門はそれを公告し、開放許諾とする。実用新案、意匠について開放許諾を声明する場合、専利権評価報告書を提供しなければならない。
l開放許諾期間中、専利権者が納付する年金は減免しなければならない。
l開放許諾を実行する専利権者は、被許諾者と許諾実施料について協議した後に通常実施権を与えることもできるが、当該専利について専用権又は排他的実施権を与えてはならない。
7、公共の利益を目的とする最初の公開では新規性を喪失しない
l専利出願した発明創造が、出願日前の6ヶ月以内に、国に緊急事態または非常事態が発生し、公共利益の目的のために初めて公開された場合、新規性を喪失しない。
8、その他
l専利出願及び専利権の行使は信義誠実の原則に従わなければならない。専利権を濫用して公共の利益又は他人の合法的な権益を害してはならない。
l原子核変換の方法には、専利権を付与しない。
l国は、専利権が付与された単位が、株式、オプション、配当などの形で財産権による賞励を実施し、発明者又は創作者にイノベーションによる収益が合理的に分配されるようにすることを推奨する。
l出願人が特許、実用新案の優先権を主張する場合、出願時に優先権を主張する書面を提出し、最初に出願した日から16ヶ月以内に最初に提出した専利出願書類の謄本を提出しなければならない。
l専利権侵害の訴訟時効は3年とし、専利権者又は利害関係人が侵害行為及び侵害者を知った日又は知るべきであった日から起算する。
l専利権侵害の紛争が実用新案又は意匠に係る場合、被疑侵害者は自発的に専利権評価報告書を提示してもよい。